差し押さえの解除という手続きは条文に無い
差し押さえを解除したい、という言葉で調べると情報が散らばります。理由の一つは、民事執行法に「解除」という手続きが無いことです。条文にあるのは停止と取消しで、この二つは効果が違います。
止まる場合が8つ並んでいる(民事執行法39条1項)
民事執行法39条1項が、停止しなければならない場合を列挙しています。
強制執行は、次に掲げる文書の提出があつたときは、停止しなければならない。
続く1号から8号までは、どれも「文書の提出」で書かれています。判決や和解調書のように裁判所が関わるものが1号から7号までで、8号だけが債権者の側の書面です。
債権者が、債務名義の成立後に、弁済を受け、又は弁済の猶予を承諾した旨を記載した文書
つまり債権者が「受け取った」または「待つ」と書いた書面を出せば止まります。話し合いで止められる余地があるのは、ここです。
8号で止まるのは、期間が決まっている(39条2項・3項)
ただし8号には続きがあります。同条2項です。
前項第八号に掲げる文書のうち弁済を受けた旨を記載した文書の提出による強制執行の停止は、四週間に限るものとする。
そして3項です。
第一項第八号に掲げる文書のうち弁済の猶予を承諾した旨を記載した文書の提出による強制執行の停止は、二回に限り、かつ、通じて六月を超えることができない。
4週間、または2回で通じて6か月。この間に別の手を打たないと、また動き出す形になっています。
弁済を受けた旨
- 4週間
弁済の猶予を承諾した旨
- 2回・通じて6か月まで
どちらも一時的に止めるだけ。この間に別の手を打たないと、また動き出す
止まることと、無かったことになることは別
40条1項が、既にした執行処分の扱いを決めています。
前条第一項第一号から第六号までに掲げる文書が提出されたときは、執行裁判所又は執行官は、既にした執行処分をも取り消さなければならない。
読みどころは**「第一号から第六号まで」**という範囲です。7号(一時の停止)と8号(弁済・猶予)は入っていません。
つまり債権者の書面で止めた場合、差押えそのものは残ります。止まっている間に猶予が切れれば、その差押えのまま続きます。
| 何号の文書か | 執行処分の取消し |
|---|---|
| 1号〜6号 | 取り消さなければならない |
| 7号・8号 | 取消しの規定に入っていない |
「解除された」と「止まっている」を混ぜて読まないでください。この違いは、次に何をするかを決めるところで効いてきます。
範囲を変える申立ては別にある
止めるのとは別に、差し押さえられる範囲そのものを動かす道があります。民事執行法153条1項です。
執行裁判所は、申立てにより、債務者及び債権者の生活の状況その他の事情を考慮して、差押命令の全部若しくは一部を取り消し、又は前条の規定により差し押さえてはならない債権の部分について差押命令を発することができる。
こちらは「取り消し」と書かれています。生活の状況を考慮して、差押命令の全部または一部を取り消せる形です。39条の停止とは根拠も効果も違います。
条文の読み方と、給料の場合の枠は給料の差し押さえは4分の3が禁止で、上限が政令にあるにまとめました。預金口座の場合は口座の差し押さえに4分の3の枠は無いにあります。
申立てをすると、結論が出るまでの間も止められる
153条には、申立てをした時点で効く項があります。3項です。執行裁判所は、その裁判が効力を生ずるまでの間、担保を立てさせるかどうかを問わず、第三債務者に対して支払その他の給付の禁止を命ずることができる、と定めています。
第三債務者は、給料なら勤務先、預金なら銀行です。申立ての結論を待つあいだも、支払いを止めておける形になっています。
ここが効くのは、時間の制約があるからです。民事執行法155条1項は、債権者が取り立てできるのを債務者への送達から1週間後とし、同条2項が給料などの場合にこれを4週間と読み替えています。取り立てられてしまうと、戻す話に変わります。
だから届いた日から数えることになります。預金なら1週間、給料なら4週間のうちに動けるかどうかが分かれ目です。
手続きに入って止める道もある
債務整理の手続きそのものに、強制執行を止める規定があります。自己破産なら破産法42条、免責の申立て後なら249条です。個人再生にも中止の規定があります。
ただし税金や社会保険料の滞納処分は、これらの規定では止まりません。条文の並びは給料の差し押さえは4分の3が禁止で、上限が政令にあるに書きました。
税金の滞納処分にも停止の制度はありますが、根拠は国税徴収法のほうにあります。差押えの根拠がどちらの法律かは、届いた書面の名前で分かります。
順番の整理
差押えが始まってから動く場合、このページで見た条文はそれぞれ別の道になります。
- 債権者と話して、39条1項8号の書面をもらう(4週間または6か月まで)
- 153条1項の申立てで、範囲そのものを変える
- 債務整理の手続きに入って、42条などの規定で止める
1は速いかわりに期限が来ます。1で時間を作って、2か3へ進むという順番になります。 1だけで終えると、期限のあとに同じ状態へ戻ります。
迷ったときの窓口
法テラス(日本司法支援センター)は、収入等の条件を満たす場合に無料の法律相談を扱っています。契約や請求でもめている場合は、消費者ホットライン 188 が窓口です。税金の滞納は、各税務署と自治体の納税相談の窓口になります。
頼む前に、代理できる範囲を見る
認定を受けた司法書士が代理できるのは、1社あたり140万円までです。線の引き方は司法書士と弁護士の違いは140万円で分かれるにあります。
このサイトが窓口として載せているアース司法書士事務所は、事務所紹介のページに代表者の認定番号と大阪司法書士会の登録番号を出しています。報酬は「1社あたり11,000円〜(税込)」と下限の形で示されているため、金額はここに書いていません。代理権を超える場合の費用が別に置かれているので、差押えが始まっている状態で相談するなら、そこまで含めて聞くことになります。
まとめ
- 民事執行法に「解除」という手続きは無い。あるのは停止(39条)と取消し(40条)
- 39条1項は8つの文書を挙げていて、8号だけが債権者の側の書面
- 8号で止まるのは4週間、猶予なら2回で通じて6か月まで(同条2項・3項)
- 40条が取消しの対象にしているのは1号から6号までで、8号は入っていない
- 範囲そのものを変える申立ては153条1項にあり、こちらは取り消しと書かれている
- 税金や社会保険料の滞納処分は、破産法などの規定では止まらない
止まっている間に次の手を決めることになります。