時効援用は内容証明で送る|郵便法が証明するもの
何年も連絡が無かった借金について、督促状が届くことがあります。期間が過ぎていれば消えていると思いたくなりますが、そうはなっていません。期間が過ぎたことと、支払いの義務が無くなることは別です。
言わなければ、裁判所は使えない(民法145条)
民法145条が、この順序を決めています。
時効は、当事者(消滅時効にあっては、保証人、物上保証人、第三取得者その他権利の消滅について正当な利益を有する者を含む。)が援用しなければ、裁判所がこれによって裁判をすることができない。
援用しなければ、裁判所は時効による裁判ができません。期間が過ぎているかどうかを、裁判所が自分で調べて勝手に判断することはありません。
期間そのものは民法166条1項にあります。1号がこうです。
債権者が権利を行使することができることを知った時から五年間行使しないとき。
期間の数え方と、途中で数え直しになる場面は借金の時効は、待っている間に何度でも振り出しに戻るにまとめました。このページは、期間が過ぎたあとに何をするかのほうを扱います。
援用の方法は民法に定められていない
145条は「援用しなければ」とだけ定めていて、どう伝えるかには触れていません。口で伝えても援用にはなります。
それでも記録の残る形で送るのは、あとで争いになったときに困るからです。相手が「そんな連絡は受けていない」と言えば、伝えたことを示すのは援用した側になります。
そこで使われるのが郵便の証明サービスです。ただし、ここで取り違えが起きます。
内容証明と配達証明では、証明されるものが違う
郵便法48条1項が内容証明を定めています。
内容証明の取扱いにおいては、会社において、当該郵便物の内容である文書の内容を証明する。
証明されるのは文書の内容です。何を書いて出したかが残ります。
一方、郵便法47条が配達証明です。
配達証明の取扱いにおいては、会社において、当該郵便物を配達し、又は交付した事実を証明する。
こちらが証明するのは配達し、又は交付した事実です。届いたかどうかが残ります。
内容証明(郵便法48条1項)
- 当該郵便物の内容である文書の内容
- 何を書いて出したかが残る
配達証明(郵便法47条)
- 当該郵便物を配達し、又は交付した事実
- 届いたかどうかが残る
証明の対象が文書の中身か、配達の事実かで分かれる。援用ではどちらも要ることになる
援用を伝えたことを示すには、何を書いたかと、それが届いたことの両方が要ります。だから実務では、内容証明に配達証明を付けて出す形が取られます。片方だけだと、内容は残るが届いたかが残らない、あるいはその逆になります。
送る前に、承認と読まれる返事をしない
援用を考えている間に、相手から電話が来ることがあります。ここで気をつけるのが民法152条1項です。
時効は、権利の承認があったときは、その時から新たにその進行を始める。
一部でも払う、待ってほしいと頼むといったやりとりが権利の承認にあたりえます。承認があれば、そこから期間は新たに進み始めます。それまで数えた年数は残りません。
督促の電話で「少しずつなら」と答えるのは、この条文の側から見ると不利に働きます。金額や日付を確かめる前に返事をしないほうが安全です。
完成する前の「時効は使いません」は効かない
契約書や念書に、時効を主張しないという約束が入っていることがあります。民法146条がこれを扱っています。
時効の利益は、あらかじめ放棄することができない。
あらかじめの放棄は、この条文によって効力を持ちません。契約の時点で書かされていても、それを理由に援用ができなくなるわけではありません。
ただし「あらかじめ」なので、完成したあとの話は別に扱われます。完成後に支払う約束をした場合の扱いは、条文だけでは決まりません。そこが争点になりそうなときは、自分で結論を出さずに相談したほうが早い場面にあたります。
送ったあとに起きること
援用の通知を出しても、相手が受け入れるとは限りません。争う場合は訴訟や支払督促になります。
裁判所から書類が届いたときに放っておくと不利に働くことは借金の時効は、待っている間に何度でも振り出しに戻るで条文から書きました。届いた書類の期限は短いので、届いた日を必ず控えます。
古い債権が債権回収会社に移っていることもあります。その場合に誰へ送るのかは債権回収会社から請求が来たときにまとめました。
自分で送るか、頼むか
援用の通知を自分で出すことはできます。ただし相手が争ってきたときに代理してもらえる範囲には線があります。司法書士が裁判外の和解を代理できるのは1社あたり140万円までで、しかも法務大臣の認定を受けた認定司法書士に限られます。
線の引き方は司法書士と弁護士の違いは140万円で分かれるにまとめました。認定を受けているかは、事務所が公表している認定番号から司法書士会に確かめられます。確かめ方は債務整理のおすすめを名簿で確かめるにあります。
払いすぎた利息がある場合は、援用ではなく返還請求のほうが問題になります。そちらの起点は過払い金の時効は起点が条文に書かれていないにまとめました。
頼む場合、窓口も同じ線で分かれる
アース司法書士事務所は事務所紹介のページに、代表者の認定番号(第612074号)と大阪司法書士会の登録番号3331を載せています。簡裁訴訟代理等関係業務、つまり140万円までを扱える範囲の認定です。認定を受けているかどうかを、依頼する前に自分で照らせる形です。
シン・イストワール法律事務所は弁護士法人で、公式サイトに代表弁護士の登録番号60436を載せています。1社140万円を超える債権や、相手が争ってきたあとの訴訟まで見込むなら、こちらの側になります。
どちらも、番号が出ていることが照らし合わせの出発点です。
まとめ
- 民法145条により、援用しなければ裁判所は時効による裁判をしない
- 援用の方法は民法に定められていないので、記録の残る形で送ることになる
- 郵便法48条1項の内容証明が証明するのは、文書の内容
- 郵便法47条の配達証明が証明するのは、配達し、又は交付した事実
- 何を書いたかと、届いたことの両方を残すには、内容証明に配達証明を付ける
- 民法152条1項により、一部の支払いや支払猶予の依頼が承認にあたりうる
- 民法146条により、完成する前の時効の利益の放棄は効力を持たない
督促状が届いたら、返事をする前に日付を確かめてください。