債務整理の事務所は途中で変更できる
依頼したあとで連絡が返ってこない、進み方に納得できない。そういうときに事務所を変えられるのかを条文から見ます。
委任はいつでも解除できる(民法651条)
弁護士や司法書士に手続きを頼む契約は、民法でいう委任にあたります。その解除について、条文はこう定めています。
委任は、各当事者がいつでもその解除をすることができる。
理由の説明は要りません。期間の縛りもありません。依頼した側からも、受けた側からも、いつでも解除できます。
ただし次の項に条件が付きます。
前項の規定により委任の解除をした者は、次に掲げる場合には、相手方の損害を賠償しなければならない。ただし、やむを得ない事由があったときは、この限りでない。
損害の賠償が必要になる場合が挙げられていて、その先頭が「相手方に不利な時期に委任を解除したとき」です。そしてただし書きで、やむを得ない事由があるときは外れます。
払った着手金はどうなるか(民法648条3項)
いちばん気になるところです。報酬については別の条文があります。
受任者は、次に掲げる場合には、既にした履行の割合に応じて報酬を請求することができる。
挙げられているのは「委任者の責めに帰することができない事由によって委任事務の履行をすることができなくなったとき」と「委任が履行の中途で終了したとき」です。
途中で解除した場合は2つ目にあたります。請求できるのは、そこまでにやった割合に応じた分です。
引き受けたことを知らせる通知を出しただけ
- 進んだ割合は小さい
- 全額が事務所に残る形にはなりにくい
和解が成立している
- その社について事務は終わっている
- 割合としては進んでいる
返る額の考え方
債務整理は債権者ごとに手続きが進むので、社によって進み方が違うことがあります。どこまで終わっているかを社ごとに聞いてください。依頼を受けた側が出す受任通知については受任通知が届くと取立てが止まるにまとめました。その通知を出した時点で、外向きには動いています。
契約書の解約金が効かないことがある(消費者契約法2条)
事務所によっては、契約書に解約時の違約金を書いていることがあります。そこに上限があります。弁護士も司法書士も事業者なので、依頼する側との契約は消費者契約法のいう消費者契約にあたります。
この法律において「消費者契約」とは、消費者と事業者との間で締結される契約をいう。
同法9条1号は、解除に伴う違約金のうち同種の契約の解除で事業者に生ずべき平均的な損害の額を超える部分を無効としています。契約書に書いてあっても、その額を超える部分は効きません。
同じ形は結婚相談所でも起きていて、そちらは特定商取引法が上限を具体的な数字で決めています。債務整理にはその数字が無いぶん、平均的な損害がいくらかという話になります。
事務所を変える前に確かめること
解除できることと、変えたほうがよいことは別です。先に次を確かめてください。
- いまどこまで進んでいるか。社ごとに聞く
- 次の事務所の費用。着手金は最初から掛かり直す
- 手続きの期限。裁判が始まっていると日程が動かせないことがある
とくに2は見落としやすいところです。新しい事務所でも着手金は改めて必要になるので、**2社ぶん払う形になります。**費用の考え方は債務整理の費用は着手金と報酬に分かれるにまとめました。
受任通知を出したあとの解除は、外にも影響する
もう1つ知っておくとよいことがあります。受任通知は債権者に対して「この事務所が代理します」と伝える通知なので、解除するとその前提が消えます。
新しい事務所が受任通知を出し直すまでのあいだ、債権者からの連絡が本人に戻ることがあります。空白を作らないために、次の事務所を決めてから解除するほうが安全です。
順番としては、次の事務所に事情を話して受任の見込みを確かめ、そのうえで前の事務所に解除を伝える形になります。2つの事務所に同時に頼む状態は短いほうがよいので、日程を先に決めておいてください。
このサイトが載せているアース司法書士事務所は認定司法書士(法務大臣の認定を受けた司法書士)、シン・イストワール法律事務所は弁護士です。この違いは1社あたりの金額で効きます。認定司法書士が代理できるのは1社140万円までなので、その線を超える債権者がいる場合は弁護士でないと代理できません140万円の上限と認定の有無については司法書士と弁護士の違いは140万円で分かれる(認定司法書士が代理できるのは1社140万円まで)にまとめました。
前の事務所で進んでいた社の金額が分かっているなら、それを持って次の事務所に相談するほうが早く決まります。
裁判所の手続きが始まっている場合は、代理人の変更を裁判所にも届ける必要があります。そこは新しい事務所が手続きするので、いつから始まっているかを伝えられるようにしておいてください。
動かないことが理由なら、先に督促する
連絡が返らないことが理由なら、解除の前に書面で期限を切って督促してください。その記録が「やむを得ない事由」の材料になります。
それでも動かないときは、所属する会に相談する道があります。弁護士なら各地の弁護士会、司法書士なら司法書士会に苦情の窓口があります。懲戒の申立てとは別に、話を聞いてもらう窓口が置かれています。
消費生活センターは事業者との契約についての相談を受け付けていますが、資格者の業務内容そのものについては所属する会のほうが早く進みます。
まとめ
- 民法651条は、委任はいつでも解除できるとしている
- 理由の説明は要らないが、相手に不利な時期だと賠償の問題が残る
- ただしやむを得ない事由があるときは、その賠償も要らない
- 払った報酬は「既にした履行の割合」に応じた分だけが事務所に残る
- 契約書の違約金は、平均的な損害を超える部分が消費者契約法9条1号で無効
- 変える場合、次の事務所でも着手金が改めて掛かる