受任通知が届くと取立てが止まる
督促が続いている状態で調べている人が多いところなので、先に書いておきます。
依頼すると、貸金業者からの直接の請求は止まります。これは事務所の営業文句ではなく、条文に書かれていることです。
根拠は貸金業法21条1項9号
長い条文ですが、そのまま引きます。
債務者等が、貸付けの契約に基づく債権に係る債務の処理を弁護士、弁護士法人若しくは弁護士・外国法事務弁護士共同法人若しくは司法書士若しくは司法書士法人(以下この号において「弁護士等」という。)に委託し、又はその処理のため必要な裁判所における民事事件に関する手続をとり、弁護士等又は裁判所から書面によりその旨の通知があつた場合において、正当な理由がないのに、債務者等に対し、電話をかけ、電報を送達し、若しくはファクシミリ装置を用いて送信し、又は訪問する方法により、当該債務を弁済することを要求し、これに対し債務者等から直接要求しないよう求められたにもかかわらず、更にこれらの方法で当該債務を弁済することを要求すること。
条件は3つに分かれています。
- 債務の処理を弁護士等に委託したこと
- 弁護士等または裁判所から書面で通知があったこと
- 正当な理由がないこと
この3つがそろうと、電話・電報・ファクシミリ・訪問による請求が21条1項が禁じる言動に入ります。実務でこの書面が受任通知と呼ばれます。弁護士や司法書士が引き受けたことを知らせるものです。
弁護士でも司法書士でも同じ
条文が「弁護士、弁護士法人…若しくは司法書士若しくは司法書士法人」と並べて書いています。司法書士に頼んだ場合も同じように止まります。
ただし司法書士に頼めるかどうかは、1件140万円の線で先に決まります。司法書士と弁護士の違いは140万円で分かれるにまとめました。
依頼する前でも守られていること
受任通知を出す前の段階にも、条文の制限はかかっています。21条1項が挙げる言動のうち、知られていないものを並べます。
勤務先への連絡は3号です。
正当な理由がないのに、債務者等の勤務先その他の居宅以外の場所に電話をかけ、電報を送達し、若しくはファクシミリ装置を用いて送信し、又は債務者等の勤務先その他の居宅以外の場所を訪問すること。
職場に電話をかけること自体が制限されています。居宅以外の場所すべてが対象なので、実家や親族の家も入ります。
借金があることを人に知らせるのは5号です。
貼り紙、立看板その他何らの方法をもつてするを問わず、債務者の借入れに関する事実その他債務者等の私生活に関する事実を債務者等以外の者に明らかにすること。
家族に払わせるのは7号です。
債務者等以外の者に対し、債務者等に代わつて債務を弁済することを要求すること。
保証人になっていない家族に請求することはできません。
時間帯にも決まりがある
1号が、内閣府令で定める時間帯の電話・ファクシミリ・訪問を制限しています。2号は、債務者が弁済や連絡の時期を申し出た場合の扱いです。
条文が「社会通念に照らし不適当と認められる時間帯として内閣府令で定める時間帯」と書いているので、具体の時刻は府令の側にあります。
対象になる相手
21条がかかるのは「貸金業を営む者」と、その債権の取立てについて委託を受けた者です。回収を委託された会社にも同じ制限がかかります。
保証会社が肩代わりしたあとも、同じ制限が続きます。根拠は貸金業法24条の2第2項です。保証業者が求償権などを取得した場合に、21条を含む規定を準用するとしています。返済が滞って保証会社が代わりに払い、そこから請求が来る形でも、取立ての制限は外れません。
3項は、その手前も塞いでいます。取立てにあたって21条1項に違反するおそれが明らかな者は、保証の相手にできません。暴力団員等も同じです。貸金業者がそれを知っていたとき、または知ることができたときは、保証契約を結んではならないとされています。
保証会社でない「弁済を委託された者」にも及ぶ(24条の3第2項)
保証会社とは別に、貸金業者が弁済を他人に委託する形があります。そこにも同じ準用が置かれています。24条の3第2項です。
委託を受けて弁済した者が求償権などを取得した場合について、21条を含む規定を準用するとしています。保証業者を除いた「受託弁済者」が対象なので、24条の2とは別の相手を拾う条文です。
請求してくる相手の名前が変わっても、21条は付いて回ります。どちらの条文が当たるかは、相手が保証業者かどうかで分かれます。
同じ条の3項が、手前も塞いでいます。
貸金業者は、貸付けの契約に基づく債務の弁済を他人に委託しようとする場合において、その相手方が次の各号のいずれかに該当する者(以下この項において「取立て制限者」という。)であることを知り、若しくは知ることができるとき、又は当該弁済の後取立て制限者が当該受託弁済に係る求償権等の債権譲渡等を受けることを知り、若しくは知ることができるときは、当該弁済の委託をしてはならない。
各号は暴力団員等と、その支配下の団体、そして21条1項に違反するおそれが明らかな者です。「当該弁済の後」まで書かれています。あとで債権が渡ることを知っていた場合も対象です。
4項は、密接な関係を有する者に委託したときの注意義務を定めています。
貸金業者は、政令で定める密接な関係を有する者に貸付けの契約に基づく債務の弁済を委託したときは、その者が受託弁済に係る求償権等の取立てに当たり第二項において準用する第二十一条第一項の規定に違反し、又は刑法若しくは暴力行為等処罰に関する法律の罪を犯さないように、相当の注意を払わなければならない。
**「相当の注意を払わなければならない」。**委託して終わりにはできない書き方です。
一方で、これらの条文は貸金業法の中にあります。貸金業の登録をしていない相手には及びません。そこは別の法律の問題になります。
催告の書面にも決まりがある
21条2項が、支払を催告する書面に書くべき事項を並べています。
貸金業を営む者の商号・名称または氏名と住所と電話番号、書面を送付する者の氏名、契約年月日、貸付けの金額、貸付けの利率、催告に係る債権の弁済期、催告する金額です。
誰がどの契約についていくら請求しているのかが、書面で分かる形になっています。届いた書面にこれらが書かれていない場合は、そこ自体が確かめる材料になります。
守られなかったときの筋道
21条は貸金業法の中にあるので、違反があれば監督の対象になります。24条の6の3は、登録を受けた貸金業者の業務の運営について、資金需要者等の利益の保護を図るため必要があると認めるときに、業務の方法の変更その他の措置を命じることができると定めています。
命じるのは内閣総理大臣または都道府県知事です。苦情を伝える先が、制度として用意されています。
止まるのは請求であって、借金ではない
ここは分けて読む必要があります。止まるのは直接の請求で、債務が消えるわけではありません。
利息も原則として止まりません。任意整理では、そこから先を債権者との話し合いで決めることになります。手続きごとの違いは債務整理の種類は4つで決める人が違うにまとめました。
請求そのものがいつまで続くのかは借金の時効は、待っている間に何度でも振り出しに戻るで条文から見ています。
止まらないときの窓口
書面が届いているのに請求が続く場合は、まず依頼した事務所に伝えます。そのうえで、監督官庁である財務局や都道府県の貸金業担当窓口、日本貸金業協会の相談窓口があります。
契約や請求の内容でもめている場合は消費者ホットライン 188、費用の相談は法テラス(日本司法支援センター)が窓口になります。
相談する先があること自体を知っておくと、急かされにくくなります。
保証人には別に連絡が行く
受任通知で止まるのは、依頼した本人への直接の請求です。保証人がいる借入先では、保証人への請求は別の話になります。
保証人がいるかどうかは、契約したときの書面で確かめられます。どの借入先を対象にするかを選べる手続きもあるので、先に印を付けておくと相談の場で決めやすくなります。
相談の前にできること
- 借入先ごとの残高と、最後に返した日を書き出す
- 届いた督促の書面を捨てずに取っておく
- 電話の記録を残す
3つとも、依頼するかどうかを決める前にできます。用意するものは相談の前に用意するものにまとめました。
裁判所を通した差押えは、この規定とは別の仕組みで動きます。給料からいくら残るかは給料の差押えは4分の3が禁止で、上限が政令にあるにまとめました。
止めるには、まず依頼が要る
21条1項9号が働くのは、弁護士等から書面で通知があったあとです。通知を出す人がいないと、この条文は動きません。そこが取立てを止める入口になります。
頼める相手は金額で分かれます。司法書士が任意整理で代理できるのは1社あたり140万円までで、認定を受けた司法書士に限られます。大阪のアース司法書士事務所は、事務所紹介のページに代表者の認定番号(第612074号)と大阪司法書士会の登録番号を載せています。
まとめ
- 弁護士等から書面で通知があると、貸金業者は直接の請求ができなくなる
- 根拠は貸金業法21条1項9号。弁護士でも司法書士でも同じ
- 依頼前でも、勤務先への連絡・第三者に知らせること・家族への請求は制限されている
- 制限がかかるのは貸金業者と、取立ての委託を受けた者
- 止まるのは請求であって、債務が消えるわけではない
債権を譲り受けた会社にも同じ規制が準用されます。扱いは債権回収会社から請求が来たときに分けて書きました。
相手が登録を受けているかどうかは、この条文とは別に確かめられます。登録が無い場合の扱いは闇金は司法書士に頼めるかで条文から追いました。
すでに差押えが始まっている場合は、止め方の条文が別にあります。停止(民事執行法39条)と取消し(40条)の違いは差し押さえの解除という手続きは条文に無いにまとめました。
請求が分割から残額の全部に変わっている場合は、その根拠を先に見ることになります。どこに書いてあるかは期限の利益の喪失|残り全部が一度に来るに条文から整理しました。