債務整理の種類は、決める人で分かれる
手続きの違いは、減額の幅で説明されることが多いところです。
条文で見ると、違うのは決める人のほうです。誰の同意が要るかで並べ直せます。
決める人で並べる
手続き決める人
- 任意整理債権者1社ずつの合意
- 特定調停簡易裁判所の調停話がまとまるかどうか
- 個人再生債権者の多数の同意と、裁判所の認可
- 自己破産裁判所免責許可の決定
上から下へ行くほど、こちらの意向だけでは決まらなくなります。その代わり、効果は大きくなります。
任意整理は裁判所を通さない
任意整理は、債権者と直接話をつける手続きです。条文の言葉では「裁判外の和解」にあたります。
裁判所が関わらないので、債権者が応じなければ成立しません。1社ずつ別に話すので、応じる社と応じない社が出ることもあります。
司法書士に頼めるのは1件140万円まで、しかも認定を受けた司法書士に限られます。司法書士と弁護士の違いは140万円で分かれるにまとめました。
特定調停は裁判所の調停を使う
特定調停は、簡易裁判所で話し合って決める枠組みを使います。特定調停法2条3項が定義しています。
この法律において「特定調停」とは、特定債務者が民事調停法第二条の規定により申し立てる特定債務等の調整に係る調停であって、当該調停の申立ての際に次条第一項の規定により特定調停手続により調停を行うことを求める旨の申述があったものをいう。
同法3条1項は、特定債務者が自ら申し立てられると書いています。本人で申し立てられるところが任意整理と違います。
ただし調停なので、まとまらなければ成立しません。決めるのは裁判所の判決ではなく、話し合いの結果です。
個人再生は同意と認可の両方が要る
民事再生法1条が、目的の中で決め方を書いています。
この法律は、経済的に窮境にある債務者について、その債権者の多数の同意を得、かつ、裁判所の認可を受けた再生計画を定めること等により、当該債務者とその債権者との間の民事上の権利関係を適切に調整し、もって当該債務者の事業又は経済生活の再生を図ることを目的とする。
「債権者の多数の同意を得、かつ、裁判所の認可を受けた」と並んでいます。どちらか一方では足りません。
再生計画で決めた分を返していく形なので、返済そのものは続きます。155条3項は、特別の事情がある場合を除き、認可の確定から10年を超えない範囲で期限を定めるとしています。
自己破産は裁判所が決める
破産法252条1項です。
裁判所は、破産者について、次の各号に掲げる事由のいずれにも該当しない場合には、免責許可の決定をする。
各号が免責不許可事由で、財産の隠匿、破産手続の遅延を目的とした行為、特定の債権者への偏った弁済、浪費または賭博その他の射幸行為による著しい財産の減少などが並びます。
効力は253条1項です。
免責許可の決定が確定したときは、破産者は、破産手続による配当を除き、破産債権について、その責任を免れる。ただし、次に掲げる請求権については、この限りでない。
ただし書きで外れるものがあります。租税等の請求権、悪意で加えた不法行為に基づく損害賠償請求権、養育費など扶養の義務に係る請求権、罰金等の請求権です。
全部が消えるわけではありません。
返す期間にも定めがある
個人再生は返済が続く手続きなので、期間が問題になります。民事再生法155条3項です。
再生計画によって債務が負担され、又は債務の期限が猶予されるときは、特別の事情がある場合を除き、再生計画認可の決定の確定から十年を超えない範囲で、その債務の期限を定めるものとする。
認可の確定から10年を超えない範囲と書かれています。特別の事情がある場合が除かれているので、そこは個別の判断になります。
同条4項は、再生手続開始前の罰金等について、再生計画で減免その他権利に影響を及ぼす定めをすることができないとしています。罰金は個人再生でも減りません。
保証人には及ばない
手続きを選ぶときにいちばん効くのがここです。破産法253条2項。
免責許可の決定は、破産債権者が破産者の保証人その他破産者と共に債務を負担する者に対して有する権利及び破産者以外の者が破産債権者のために供した担保に影響を及ぼさない。
保証人の義務は残ります。 家族や知人に保証人になってもらっている場合、その人に請求が行きます。
任意整理はどの債権者と話すかを選べるので、保証人がいる借入先を対象から外すという組み立てができます。ここが手続きを分ける実務上の分かれ目です。
入口の条件も違う
決める人だけでなく、その手続きに入れるかどうかの条件も違います。
民事再生法1条は対象を「経済的に窮境にある債務者」と書いています。返せている状態では入口に立てないということです。
任意整理と特定調停は、裁判所の手続きに入る前の段階でも使えます。特定調停法2条1項は特定債務者を「支払不能に陥るおそれのあるもの」等と定義していて、まだ支払不能になっていない段階を含みます。
つまり早い段階では選べる手続きが多く、遅くなるほど選択肢が減ります。どこにいるかを先に見ておくことになります。
費用の比べ方
手続きが違えば費用の出方も違います。任意整理は債権者の数で変わり、個人再生と自己破産は裁判所に納める費用が別に乗ります。
1社あたりなのか総額なのかを必ず確かめるところは共通です。聞く項目は相談の前に取引履歴を取り寄せるにまとめました。
どれを選んでも共通すること
依頼して、引き受けたことを知らせる通知である受任通知が出れば、貸金業者からの直接の請求は止まります。受任通知が届くと取立てが止まるにまとめました。
払いすぎた利息があれば、どの手続きでも計算の対象になります。過払い金の仕組みは上限金利で決まるにまとめました。
亡くなった人の借金は、先に相続の話になる
自分で作った借金ではなく、亡くなった人から引き継いだものなら、先に相続放棄が使えるかを見ることになります。期限は3か月で、起点は死亡日ではありません。条文は借金の相続放棄は3か月。起点は死亡日ではないにまとめました。
決める前に出しておくもの
- 借入先ごとの残高
- 保証人がいる借入先はどれか
- 毎月いくらなら返せるか
- 手放したくない財産があるか
2と4が、手続きの選択を大きく左右します。用意するものは相談の前に用意するものにまとめました。
途中で変えられるか
任意整理で話がまとまらなかった場合に、個人再生や自己破産へ移ることはあります。逆に、裁判所の手続きを始めてから任意整理に戻すのは手間が大きくなります。
軽いほうから試すか、最初から重いほうを選ぶかは、借入先の数と保証人の有無で変わります。一度決めたら動かせない、というものではありませんが、やり直すぶんの費用と時間はかかります。
任意整理は相手が応じなければ何も決まらず、そのうえ交渉に入ると民法152条の承認にあたって時効が更新されます。先に確かめることを任意整理で先に確かめることにまとめました。
裁判所を通す2つのどちらを選ぶかは、残せる財産と払える額で分かれます。数字はどちらも条文にあるので、個人再生と自己破産は残せるものが違うにまとめました。
4つのどれを選ぶかは、頼める相手とつながっている
決める人が違うということは、代わりに動ける相手も違うということです。司法書士が任意整理で代理できるのは1社あたり140万円までで、認定を受けた司法書士に限られます。個人再生と自己破産で行うのは書類の作成です。
大阪のアース司法書士事務所は、事務所紹介のページに代表者の認定番号(第612074号)と大阪司法書士会の登録番号を載せているので、読者の側で確かめられます。
4つのうち個人再生と自己破産を選ぶなら、代理人が付くのは弁護士に頼んだ場合だけです。シン・イストワール法律事務所は弁護士事務所で、金額の上限もありません。任意整理でも、140万円を超える借入先があるならこちらになります。
まとめ
- 手続きの違いは、減額の幅より「誰が決めるか」で整理できる
- 任意整理は債権者の合意。応じなければ成立しない
- 特定調停は簡易裁判所の調停。本人で申し立てられる
- 個人再生は債権者の多数の同意と裁判所の認可の両方
- 自己破産は裁判所の免責許可で返済の義務が無くなる。税金や養育費などは免責されない
- 免責許可は保証人に影響しない。保証人がいる借入先は扱いが変わる
生活保護を受けている場合の扱いは生活保護を受けていても手続きはできるに分けて書きました。