生活保護を受けていても自己破産はできる
生活保護を受けていると債務整理ができない、という決まりはありません。2つは別の法律の制度で、片方が片方を止める仕組みにはなっていません。
ただし、生活保護を受けている人には、生活保護法のほうから別の条件がかかります。条文の順に見ていきます。
保護費は差し押さえられない
まず、債権者との関係です。生活保護法58条にこう書かれています。
被保護者は、既に給与を受けた保護金品及び進学・就職準備給付金又はこれらを受ける権利を差し押さえられることがない。
受け取った保護費も、受け取る権利も、差し押さえの対象になりません。税金についても同じ章に規定があります。
被保護者は、保護金品及び進学・就職準備給付金を標準として租税その他の公課を課せられることがない。
つまり、督促が続いていても、保護費そのものを取り立てられることはありません。給与の差し押さえとは扱いが違います。給与のほうの制限は給料の差し押さえには上限があるにまとめました。
通帳やカードを預かることも禁じられている(貸金業法20条の2第1項1号)
差し押さえの手前で、口座ごと押さえる形も塞がれています。貸金業法20条の2第1項は、公的給付が振り込まれた口座から弁済を受けることを目的として、次の行為をしてはならないとしています。その1号です。
特定受給権者の預金通帳等(当該預金若しくは貯金の口座に係る通帳若しくは引出用のカード若しくは当該預金若しくは貯金の引出し若しくは払込みに必要な情報その他当該預金若しくは貯金の引出し若しくは払込みに必要なものとして政令で定めるもの又は年金証書その他特定受給権者が公的給付を受給することができることを証する書面その他のものをいう。)の引渡し若しくは提供を求め、又はこれらを保管する行為
通帳とカードだけでなく、引出しに必要な情報と年金証書も並んでいます。暗証番号を教えるよう求めることも、この号に入ります。
**求めること自体が禁じられています。**渡してしまったかどうかで分かれていません。対象は本人だけでなく、条文が「特定受給権者」として親族その他の者も含めています。
2号は、口座のある金融機関に払出しと弁済を委託するよう求める行為です。自動で引き落とす形にさせることも、同じ条で塞がれています。
ここでいう公的給付は、法令で譲り渡しや差押えができないとされている給付です。生活保護費のほか、年金がこれに当たります。
返済に充てる原資が無いことが多い
差し押さえられないのは債権者から守るためですが、裏を返すと、保護費は返済のために渡されているものではありません。
任意整理は返済を続ける手続きです。減った分を分割で払っていくので、毎月いくらか払える見込みが要ります。収入が保護費だけの場合、その見込みを立てにくくなります。手続きごとの違いは債務整理には3つの手続きがあるにまとめました。
自己破産は返済をやめる手続きなので、この点は問題になりません。条件は自己破産できる条件は条文にあるにあります。
どの手続きを選ぶかは、収入の形と財産の中身で決まります。ここは福祉事務所ではなく、弁護士や司法書士に相談する場面です。
過払い金が戻ったときは届け出る
ここがいちばん見落とされます。生活保護法61条の義務です。
被保護者は、収入、支出その他生計の状況について変動があつたとき、又は居住地若しくは世帯の構成に異動があつたときは、すみやかに、保護の実施機関又は福祉事務所長にその旨を届け出なければならない。
過払い金が戻ってくることは収入の変動にあたります。届け出ないでおく、という選択肢は条文の側に用意されていません。
そして63条があります。
被保護者が、急迫の場合等において資力があるにもかかわらず、保護を受けたときは、保護に要する費用を支弁した都道府県又は市町村に対して、すみやかに、その受けた保護金品に相当する金額の範囲内において保護の実施機関の定める額を返還しなければならない。
戻ってきたお金が資力にあたると判断されると、受け取った保護費の範囲内で返還を求められることがあります。 額を決めるのは保護の実施機関です。
過払い金がいくら戻るかは請求してみないと分かりません。時効の数え方は過払い金の時効は10年で数えるにまとめました。
手取りが増えるとは限らない、と考えておく
上の2つを合わせると、過払い金が戻っても手元にそのまま残るとは限りません。一方で、督促と返済が止まること自体は生活の立て直しにつながります。
お金が増えるかどうかではなく、督促と返済が止まるかどうかで判断するほうが実態に合います。 取立てが止まる根拠は依頼を受けた側が出す通知の効果は受任通知が届くと取立てが止まるにあります。
費用は立替えの制度がある
手続きの費用そのものも問題になります。法テラス(日本司法支援センター)の民事法律扶助に立替えの制度があり、根拠は総合法律支援法にあります。条文と対象の範囲は債務整理の費用は4つに分かれるにまとめました。
ただし立替えの対象は代理人の報酬と実費で、裁判所に納める予納金は別の枠です。自己破産の予納金は、管財人を付けない同時廃止と管財で大きく変わります。額は自己破産の費用は手続きの種類で変わるに東京地裁の公表資料から並べました。
誰に頼めるかは金額で決まる
生活保護を受けているかどうかとは別に、依頼できる相手には線があります。司法書士が任意整理を代理できるのは1件140万円までで、しかも認定を受けた司法書士に限られます。自己破産と個人再生では、司法書士が行うのは裁判所に出す書類の作成で、代理ではありません。
このサイトが紹介しているアース司法書士事務所は、法務大臣の認定を受けた認定司法書士の事務所です。線引きの根拠は司法書士と弁護士の違いは140万円で分かれるにまとめました。
金額が上限を超えるなら弁護士に頼むことになります。生活保護を受けている場合は、法テラスを通して弁護士に依頼する形が使えます。法テラスを使わずに直接頼む場合の相手としては、債務整理を扱うシン・イストワール法律事務所のような法律事務所があります。
保護を受ける前に借りたものも対象になる
保護を受け始める前の借入も、受けている間の借入も、債務整理の対象という点では同じです。ただし、保護を受けている間に新たに借りることは、収入として届け出る義務(61条)にかかってきます。
借りて返す、を続けている状態は、保護費の計算とも食い違います。先に手続きを進めるほうが、あとの整理が少なくなります。
いつまで信用情報に残るかは債務整理の記録はいつまで残るかに、官報に載る手続きと載らない手続きの違いは官報に載るのはどの手続きかにまとめました。
先に相談する順番
生活保護を受けている場合、関わる窓口が2つになります。
どの手続きを選ぶか、費用をどうするか
- 弁護士・司法書士
- 法テラス
保護費への影響、届出、返還
- 福祉事務所(保護の実施機関)
違うのは誰が答えられるか。どちらか一方だけに聞くと、もう一方の条件が抜ける
どちらか一方だけに聞くと、もう一方の条件が抜けます。費用の立替えを申し込む段階で、法テラスから福祉事務所への確認が入ることもあります。
無料の相談先は複数あります。法テラス、各地の弁護士会・司法書士会の相談窓口、消費者ホットライン188。受けている支援を止められることを心配して相談を先延ばしにするより、先に条文の扱いを確かめるほうが安全です。
準備するものは相談の前に用意しておくものにまとめました。
まとめ
- 生活保護を受けていても債務整理はできる。2つは別の制度
- 保護費と保護を受ける権利は差し押さえられない(生活保護法58条)
- 収入の変動は届け出る義務がある(61条)。過払い金が戻ったときも同じ
- 資力があるとされると、受けた保護費の範囲内で返還を求められることがある(63条)
- 費用の立替えはあるが、裁判所の予納金は別の枠
- 手続きの選択は弁護士・司法書士、保護費への影響は福祉事務所に聞く