自己破産の費用は同時廃止か管財かで変わる
自己破産の費用を調べると、金額の幅が大きくて戸惑います。幅が出るのは事務所の値段設定の話ではなく、裁判所に納める額が事案で変わるからです。
事務所に払う分と、裁判所に納める分は別
まず分けます。事務所への報酬とは別に、裁判所へ予納金を納めます。破産法22条1項が「破産手続開始の申立てをするときは、申立人は、破産手続の費用として裁判所の定める金額を予納しなければならない」と定めています。
費目の全体像は債務整理の費用は1社あたりか総額かで変わるにまとめました。そもそも申立てができる状態かは自己破産の条件は金額では決まらないにあります。ここでは予納金の側を見ます。
予納金の額が変わる理由は216条にある
破産法216条1項です。
裁判所は、破産財団をもって破産手続の費用を支弁するのに不足すると認めるときは、破産手続開始の決定と同時に、破産手続廃止の決定をしなければならない。
読みにくいのですが、意味はこうです。配当に回せる財産が無いなら、手続きを始めると同時に終わらせる。 これが同時廃止と呼ばれるもので、財産が少ないときに管財人を付けずに進める形です。
そして2項が続きます。
前項の規定は、破産手続の費用を支弁するのに足りる金額の予納があった場合には、適用しない。
つまり費用に足りる額を予納すれば、同時廃止にはならず手続きが続きます。破産管財人が選ばれて財産を調べ、配当する流れです。管財事件と呼ばれます。
同時廃止
- 破産財団で費用をまかなえず、開始と同時に廃止する
- 予納金は少ない
管財事件
- まかなえる、または足りる額の予納があり、管財人が調査・配当する
- 予納金は多い
違うのは破産財団で費用をまかなえるかどうか。額そのものは条文に書かれていない
**額そのものは条文に書かれていません。**22条1項は「裁判所の定める金額」としか言っていないので、申し立てる裁判所に確かめる話になります。
東京地裁が公表している予納金の額
「少ない」「多い」では判断できないので、実際の額を見ます。東京地裁民事第20部が「破産事件の手続費用一覧」を公表しています(令和6年9月24日現在。PDFで配布されているもの)。
同時廃止事件
- 11,859円(中目黒庁舎で現金納付なら12,000円)
個人管財事件(代理人を立てた自己破産の申立て)
- 最低20万円+1件につき18,543円
桁が違う。このほかに申立手数料が別にかかる
このほかに申立手数料が1,500円(個人の自己破産と免責の申立て)、予納郵券が4,950円かかります。
個人管財事件 最低20万円 及び 個人1件につき18,543円
代理人を立てた個人管財事件は、実務で少額管財と呼ばれることがあります。引用した東京地裁の資料では「個人管財事件」という名前で区分されていて、少額管財という語は出てきません。呼び方が違うだけで、指しているのは同じ区分です。
同時廃止と管財では、裁判所に納める額が約1万2千円と約22万円に分かれます。事務所への報酬より、こちらの差のほうが大きくなることがあります。どちらになるかを決めるのは破産法216条で、上に引いたとおり財団の額です。
自分で申し立てると、予納金が上がる
同じ資料に、もう1つ別の区分があります。
管財事件(債権者破産申立事件及び本人申立事件)
本人申立事件は、代理人を立てずに自分で申し立てる場合です。この区分の予納金は表で決まっていて、負債総額5,000万円未満の自然人で50万円です。代理人を立てた個人管財事件の最低20万円と比べると、30万円高くなります。
| 申立ての形 | 管財になったときの予納金 |
|---|---|
| 代理人を立てた申立て | 最低20万円 |
| 本人申立て(負債5,000万円未満) | 50万円 |
理由は資料に書かれていないので断定はできませんが、代理人が事前に財産と負債を整理しているかどうかで、管財人の作業量が変わることは手続きの形から読めます。
費用を抑えるために自分で申し立てる、という判断は、管財になった場合には逆に働くことがあります。どちらになるかは申し立ててみないと分かりません。
なお、これは東京地裁の基準です。予納金の額は裁判所ごとに違うので、申し立てる裁判所の公表資料で確かめてください。
財産が無いほど安く済む、という向き
直感と逆に見えますが、条文の構造はそうなっています。配当できる財産があるから管財人が要り、管財人が働くから費用がかかります。
だから「財産が無いから費用が払えない」という状態は、そもそも同時廃止になりやすい状態でもあります。どちらになるかは裁判所の判断なので、申し立てる前には決まりません。
手元に残せる財産の範囲は個人再生と自己破産は残せるものが違うにまとめました。99万円という数字が3つの資料を辿らないと出てこないことも書いています。
予納金が払えないときの規定がある
ここがいちばん知られていない箇所です。破産法23条1項です。
裁判所は、申立人の資力、破産財団となるべき財産の状況その他の事情を考慮して、申立人及び利害関係人の利益の保護のため特に必要と認めるときは、破産手続の費用を仮に国庫から支弁することができる。職権で破産手続開始の決定をした場合も、同様とする。
国庫から仮に支弁できると書かれています。同条2項は、この場合に22条1項(予納の義務)を適用しないとしています。
「特に必要と認めるとき」という要件があるので、申し立てれば必ず使えるものではありません。それでも予納金が用意できないことが、申立てを諦める理由に直結するわけではないことは条文から言えます。
事務所への報酬のほうは、法テラスの立替えという別の制度があります。根拠と対象は債務整理の費用は1社あたりか総額かで変わるに書きました。自己破産では司法書士に頼むのは書類の作成になりますが、それも立替えの対象です。代理の号とは別の号(総合法律支援法30条1項2号ハ)に置かれています。立て替えたぶんは口座からの引落しで毎月の分割になり、返せない事情があるときのために償還免除の申請も置かれています。
司法書士に頼む場合の注意
自己破産の申立ては、司法書士法3条1項6号が挙げる簡易裁判所の手続きに入っていません。認定を受けた司法書士でも、行うのは同項4号の裁判所に提出する書類の作成です。
代理と書類作成では費用の名前も額も変わります。金額の線がどの条文から出るかは司法書士と弁護士の違いは140万円で分かれるにまとめました。
紹介している事務所はどう書いているか
記事末尾の表に挙げたアース司法書士事務所は、自己破産の基本報酬を「88,000円〜(税込)」と示したうえで、「別途、予納金等の実費が必要となります」と併記しています。
予納金が事務所報酬とは別枠であることを明示している例です。金額そのものは「〜」付きの下限なので、当サイトでは掲載していません。上がどこまでかが分からない数字を並べても、読者の判断材料になりません。
簡裁訴訟代理等関係業務は、140万円までを扱える範囲です。なお同事務所の代表はその認定を受けていますが、上に書いたとおり自己破産では認定の有無にかかわらず書類の作成になります。認定が効くのは任意整理と簡易裁判所の手続きです。
同じ表のシン・イストワール法律事務所(弁護士)は、着手金を2つに分けて示しています。同時廃止事件が407,000円、少額管財事件が506,000円です(税込。2026年9月2日確認)。この記事の軸である「同時廃止か管財か」が、料金表にそのまま出ている例です。どちらも債権者1社あたり11,000円が追加されます。印紙・郵券代などの実費は別で、管財事件では管財予納金の積立も別と書かれています。弁護士なので申立ての代理人になれます。書類作成になる司法書士との違いはそこです。
見積もりを聞くときに確かめること
- 同時廃止と管財事件のどちらになる見込みか
- その見込みでの予納金はいくらか
- 事務所の報酬に予納金は含まれるか(通常は別)
- 分割で払えるか。払い終わるまで申立てを待つのか
- 書類の作成だけか、代理人が付くのか
- 法テラスの立替えを使えるか
**2を聞かずに1だけ聞いても総額は出ません。**逆に、1の見込みが変われば2も変わります。
同時廃止でも手続きが終わるわけではない
216条の廃止は「破産手続」の廃止で、免責とは別の手続きです。同時廃止の決定があっても、その後に免責の審理が続きます。
条文の並びもそうなっていて、返済の義務が無くなる免責許可の要件は252条、効力は253条にあり、216条とは別の章に置かれています。免責されない請求権があることは個人再生と自己破産は残せるものが違うに一覧で書きました。
「同時廃止だから早く終わる」と言われることがありますが、早く終わるのは破産手続のほうで、免責が出るまでの期間とは別です。
相談の前に用意しておくもの
どちらになるかの見込みは、財産と借入先の状況で決まります。残高が分からないと見込みも立ちません。相談の前に取引履歴を取り寄せるにまとめました。
手続きが終わったあと
免責されない請求権があること、信用情報にどれだけ残るかは別の論点です。債務整理のブラックリストは信用情報にどれだけ残るかと官報に載るのはどの手続きかにまとめました。
迷ったときの窓口
法テラス(日本司法支援センター)は、収入等の条件を満たす場合に無料の法律相談を扱っています。各地の弁護士会・司法書士会にも相談窓口があります。貸金業者とのやり取りでもめている場合は、消費者ホットライン 188 が窓口になります。
まとめ
- 事務所への報酬と、裁判所への予納金は別
- 予納金の額は破産法22条1項で「裁判所の定める金額」とだけ決まっている
- 216条1項は、費用をまかなえないときに開始と同時に廃止すると定めている
- 216条2項により、足りる額を予納すれば手続きは続く(管財事件)
- 23条1項に、費用を仮に国庫から支弁できる規定がある
- 司法書士が自己破産で行うのは書類の作成で、代理ではない
費用と別に、決まるまでの時間も条文で説明が付きます。調査と、債権者が意見を述べる1か月以上の期間があるためです。順番は免責の申立ては別にしなくてよいにまとめました。