自己破産で車がどうなるかは、名義と価値で分かれる
自己破産で車がどうなるかは、一律には決まりません。条文をたどると、名義と価値と使い道の3つで分かれます。
出発点は「一切の財産」
破産法34条1項です。
破産者が破産手続開始の時において有する一切の財産(日本国内にあるかどうかを問わない。)は、破産財団とする。
「一切の財産」なので、車も原則としてここに入ります。そのうえで、同条3項に入らないものが並んでいます。
仕事に使う道具は、外れることがある
34条3項2号がこれです。
差し押さえることができない財産(民事執行法第百三十一条第三号に規定する金銭を除く。)
差し押さえることができない財産は民事執行法131条にあり、6号がこう書かれています。
技術者、職人、労務者その他の主として自己の知的又は肉体的な労働により職業又は営業に従事する者(前二号に規定する者を除く。)のその業務に欠くことができない器具その他の物(商品を除く。)
「その業務に欠くことができない器具その他の物」で、車種や金額では書かれていません。通勤に使っているだけの車と、それが無いと仕事が成り立たない車では、条文の当てはめが違います。どちらに当たるかは事情の説明のしかたで変わるので、申立ての前に伝えることになります。
手元に残す枠を広げる手続きがある
34条4項は、裁判所が破産者の生活の状況や収入を得る見込みなどを考えて、破産財団に属しない財産の範囲を広げる決定ができるとしています。申立てができる期間が決まっているので、車を残したい事情があるなら早い段階で出すことになります。
同条3項1号の現金99万円の枠と合わせて、手元に残る範囲は固定ではありません。金額の出どころは自己破産が家族に及ぶ範囲は、条文で限られているにまとめました。
ローンが残っている車は、そもそも自分のものではないことがある
ここがいちばん誤解されやすいところです。自動車ローンの契約では、完済までは販売会社や信販会社に所有権を残す形が使われます。その場合、車は破産する人の財産ではありません。
破産法62条がこう定めています。
破産手続の開始は、破産者に属しない財産を破産財団から取り戻す権利(第六十四条及び第七十八条第二項第十三号において「取戻権」という。)に影響を及ぼさない。
「影響を及ぼさない」なので、手続きが始まっても取り戻す権利はそのまま残ります。破産したから引き上げられるのではなく、もともと相手の所有物だから引き上げられるという順序です。
抵当権など担保が付いている場合は別除権になります。破産法65条1項です。
別除権は、破産手続によらないで、行使することができる。
こちらも手続きの外側で権利が動きます。
車の状態どうなるか
- ローン完済・名義は自分破産財団に入る34条1項。3項・4項の例外を検討
- 仕事に欠かせない破産財団に属しない扱いになりうる34条3項2号・民執131条6号
- ローン残・所有権は相手取戻権の対象62条。手続きと関係なく引き上げられる
- 担保が付いている別除権として手続きの外で行使される65条1項
引き上げられても、足りない分は残る
車を引き上げられて売却されても、それで債務が全部消えるとは限りません。売却代金が残りの債務に届かなければ、不足分が残ります。
破産法108条1項がその扱いを書いています。
別除権者は、当該別除権に係る第六十五条第二項に規定する担保権によって担保される債権については、その別除権の行使によって弁済を受けることができない債権の額についてのみ、破産債権者としてその権利を行使することができる。
「弁済を受けることができない債権の額についてのみ」なので、不足分は破産債権として手続きの中に入ります。そして破産債権は、返済の義務が無くなる免責許可の決定が確定すれば253条1項により責任を免れます。
つまり車は戻ってきませんが、残った分の請求が続くわけではありません。免責されない7種類に該当しない限り、そこで終わります。例外の一覧は自己破産が家族に及ぶ範囲は、条文で限られているにあります。
家族名義の車はどうなるか
34条1項が対象にしているのは「破産者が破産手続開始の時において有する」財産です。家族が所有している車は、この文の対象に入りません。
ただし名義だけを家族にしてあり、実際には破産する人が買って使っている場合は、調査の対象になりえます。管財人には財産の状況を調べる仕事があるので、名義と実態が食い違っていれば説明を求められることになります。
車検証を先に見る
名義がどちらかは、自動車検査証(車検証)の所有者の欄で分かります。使用者が自分で所有者が信販会社になっていれば、上の表の3行目です。
ここを確かめずに「車を残せますか」と聞いても、答えは出てきません。相談の前に用意しておくものは相談の前に集めておく書類にまとめました。
名義を先に移さない
払えなくなってから車を家族に譲る、といった動きには別の条文が掛かります。破産法252条1項は免責許可を出せない場合を各号で挙げていて、財産を隠したり不利益に処分したりする行為が入っています。
条件の全体は自己破産の条件は金額では決まらないにまとめました。手続きを楽にするつもりの動きが、免責のほうを危うくすることがあります。
保険と税金は、車が手元を離れるまで続く
見落とされやすいのが維持費のほうです。自動車保険の契約も自動車税の納税義務も、車が誰の手に渡るかが決まるまでは続きます。手続きの途中で止まるものではありません。
自動車税は地方税なので、滞納があれば破産法253条1項1号の租税等の請求権にあたり、免責されない側に入ります。引き上げが決まったあとも、名義が変わるまでの扱いを確かめておくことになります。
車を残す前提で選べる手続きもある
個人再生には住宅資金特別条項がありますが、これは住宅ローンについてのものです。車のローンには同じ仕組みがありません。手続きの違いは個人再生と自己破産は何が違うかにあります。
判断に迷うときは、法テラス(日本司法支援センター)や各地の弁護士会・司法書士会の相談窓口があります。消費者ホットラインは 188 です。
頼む相手で、車の扱いを主張できる範囲が変わる
自己破産の申立てで司法書士が行うのは裁判所に提出する書類の作成で、代理ではありません。車を残したい事情を、代理人として管財人や裁判所に対して説明してもらう場合は弁護士になります。シン・イストワール法律事務所は弁護士事務所で、金額の上限もありません。
一方、任意整理だけで済ませて車のローンを対象から外す形なら、認定司法書士(法務大臣の認定を受けた司法書士)なら、1社あたり140万円までは代理できます。アース司法書士事務所は認定番号(第612074号)を公開しているので、その場で確かめられます。
車を残したい事情は、早い段階で伝える
34条4項の申立てには期間の制限があり、名義の確認も申立ての前に済ませることになります。どちらも相談の段階で話しておかないと間に合いません。
頼める相手は金額で分かれます。司法書士が任意整理で代理できるのは1社あたり140万円までで、認定を受けた司法書士に限られます。自己破産で司法書士が行うのは書類の作成です。大阪のアース司法書士事務所は、事務所紹介のページに代表者の認定番号(第612074号)と大阪司法書士会の登録番号を載せているので、番号から司法書士会に確かめられます。
まとめ
- 34条1項の出発点は「一切の財産」で、車も原則ここに入る
- 34条3項2号と民事執行法131条6号により、業務に欠くことができない物は外れうる
- 34条4項により、裁判所が範囲を広げる決定をすることがある
- ローンが残っている車は62条の取戻権の話で、破産が原因ではない
- 担保が付いていれば65条1項の別除権として手続きの外で行使される
- 名義は車検証の所有者の欄で確かめる
個人再生を選んだ場合は、条文の作りが違います。住宅には特別条項があるのに車には対応する条文が無い理由は個人再生で車のローンだけ特別扱いされない理由にまとめました。
預金口座を差し押さえられた場合の扱いは口座の差し押さえに4分の3の枠は無いにあります。