個人再生の費用は、事務所に払う分と裁判所に納める分に分かれる
個人再生の費用を調べると、事務所ごとの報酬額が並びます。ただ、払う先はもう1つあります。裁判所に納める予納金です。
こちらは事務所が決めるものではないので、報酬額だけを比べても総額は出てきません。
裁判所に納める分は条文にある
民事再生法24条1項です。
再生手続開始の申立てをするときは、申立人は、再生手続の費用として裁判所の定める金額を予納しなければならない。
「裁判所の定める金額」と書かれていて、法律に額そのものは書かれていません。決めるのは事件を担当する裁判所です。
決定に不服がある場合の規定も置かれています。同条2項です。
費用の予納に関する決定に対しては、即時抗告をすることができる。
納めないと、手続きが始まらない
ここが自己破産と同じ形で効いてきます。民事再生法25条は、各号のいずれかに該当する場合には申立てを棄却しなければならないと定めていて、その1号がこれです。
再生手続の費用の予納がないとき。
「棄却しなければならない」なので、裁判所に選択の余地がありません。事務所への報酬を用意しても、予納金が用意できていなければ入口で止まります。費用を見積もるときに、この2つを分けて聞く必要があるのはこのためです。
額が変わる理由は個人再生委員にある
予納金の額が事件によって違うのは、個人再生委員が選ばれるかどうかが関わるためです。民事再生法223条1項がこう定めています。
裁判所は、第二百二十一条第二項の申述があった場合において、必要があると認めるときは、利害関係人の申立てにより又は職権で、一人又は数人の個人再生委員を選任することができる。ただし、第二百二十七条第一項本文に規定する再生債権の評価の申立てがあったときは、当該申立てを不適法として却下する場合を除き、個人再生委員の選任をしなければならない。
前半は「することができる」で、裁判所の裁量です。ただし書きのほうは「しなければならない」で、再生債権の評価の申立てがあった場合は必ず選ばれます。
そして報酬の規定が同条9項にあります。
個人再生委員は、費用の前払及び裁判所が定める報酬を受けることができる。
報酬を決めるのも裁判所です。選ばれるかどうかで納める額が変わる、という関係になります。
事務所への報酬
- 決めるのは事務所
- 債権者の数、手続きの種類で変わる
裁判所への予納金
- 決めるのは裁判所(24条1項)
- 個人再生委員が選ばれるかで変わる(223条1項・9項)
違うのは誰が額を決めるか。予納金のほうは自分でも事務所でも動かせない
個人再生委員の職務も同条2項に並んでいて、財産と収入の状況の調査、再生債権の評価に関して裁判所を補助すること、適正な再生計画案を作成するために必要な勧告をすることです。調べる人が入るぶんの費用、と読めます。
司法書士に頼む場合の位置づけ
司法書士が個人再生の申立てで行うのは、書類の作成です。司法書士法3条1項4号がこう定めています。
裁判所若しくは検察庁に提出する書類若しくは電磁的記録
同項7号は裁判外の和解について代わりに交渉できる範囲を定めていますが、そちらは簡易裁判所の対象となる紛争に限られ、上限は1件140万円です。しかも同条2項により、法務大臣の認定を受けた司法書士に限られます。個人再生はこの範囲に入りません。線引きは司法書士と弁護士の違いは140万円で分かれるにまとめました。
紹介しているアース司法書士事務所は、報酬ページで個人再生の基本報酬を「110,000円〜(税込)」と示し、「※別途、予納金等の実費が必要となります。」と併記しています。下限の表示なので、この額で済むという意味ではありません。実費が別に乗ることも同じ行に書かれています。
弁護士に頼む場合は代理人になります。同じ表のシン・イストワール法律事務所は、個人再生の着手金を住宅ローンなしで506,000円、住宅資金特別条項を使う場合で605,000円と示しています(税込。2026年9月2日確認)。債権者1社あたり11,000円が追加され、裁判所によっては個人再生委員の報酬の積立が別に要ると書かれています。家を残すかどうかで着手金が変わるのは、下の「家を残す場合の条件は別にある」とつながる形です。
費用を用意できないときの制度がある
報酬も予納金も先に必要になるので、そこで止まる人がいます。ここには法律にもとづく仕組みが置かれています。
総合法律支援法30条1項2号が、日本司法支援センター(法テラス)の業務としてこう定めています。
民事裁判等手続又は行政不服申立手続において自己の権利を実現するための準備及び追行に必要な費用を支払う資力がない国民若しくは我が国に住所を有し適法に在留する者(以下「国民等」という。)又はその支払により生活に著しい支障を生ずる国民等を援助する次に掲げる業務
そしてイが、代理人に支払うべき報酬と、その代理人が行う事務の処理に必要な実費の立替えをすることを挙げています。
読むときに落としやすいところがあります。まず立替えと書かれていることで、免除ではありません。あとから返していくことになります。そして対象が「資力がない」場合と「その支払により生活に著しい支障を生ずる」場合の2つに分けて書かれていることです。資力が0でなければ使えない、という書き方ではありません。
条文にあるのは代理人の報酬と実費で、裁判所に納める予納金がどこまで含まれるかは条文からは決まりません。利用できるかどうかは法テラスに直接確かめることになります。
返すときは月々に分かれる
「あとから返す」と聞いて、まとめて返すのかと身構える人がいます。法テラスは利用の流れのページで、返し方をこう書いています。
また、事件の内容に応じて立替を行う金額や月々の返済額なども併せて決定します。
月々の返済額まで、援助を始める時点で決まります。いくら立て替えるかと、毎月いくら返すかが同時に決まる形です。
返し方そのものも、あとから変わりうると書かれています。
また、法テラスが立て替えた費用の返済方法についても事件結果に応じて、決定されます。
個人再生は結果が出るまでに時間がかかります。依頼した時点の返し方が最後まで同じとは限りません。
始まる時期も押さえておくと、資金の見通しが立てやすくなります。
返済された費用は、次の利用者の援助のために使用されますので、必ずご返済をお願いします。
援助が始まると返済も始まります。手続きが終わってからではありません。再生計画にもとづく返済とは別に、法テラスへの返済が並行して走ります。毎月の負担を見るときは2つを足すことになります。
再生計画のほうの返済額は個人再生でいくら払うかは条文に書いてあるにあります。
見積もりを聞くときに分けること
聞き方をこう分けると、比べられる形になります。
- 事務所への報酬は、債権者が何社でその額か
- 予納金はいくらを見込んでいるか
- 個人再生委員が選ばれる前提か、選ばれない前提か
- 実費(郵券・官報公告費用など)は報酬に含まれるか
「総額いくら」だけを聞くと、前提が違う数字どうしを比べることになります。
家を残す場合の条件は別にある
住宅資金特別条項を使うかどうかで、確かめることが増えます。条件は個人再生で家を残せるかは、条件を1つずつ満たしているかで決まるに分けました。
返す総額は、費用とは別の話
費用のほかに、再生計画で返していく額があります。こちらは民事再生法が最低弁済額の基準を定めていて、費用の多い少ないとは別に決まります。自己破産との違いは個人再生と自己破産は何が違うかにまとめました。
自己破産のほうの費用は自己破産の費用は予納金で決まる、手続き全体の費用の見方は債務整理の費用は何で決まるかにあります。
迷ったときの窓口
法テラス(日本司法支援センター)は、収入等の条件を満たす場合に無料の法律相談を扱っています。各地の弁護士会・司法書士会にも相談窓口があります。請求の内容でもめている場合は、消費者ホットライン 188 が窓口になります。
まとめ
- 24条1項により、申立てのときに裁判所の定める金額を予納する
- 額は法律に書かれておらず、決めるのは裁判所
- 25条1号により、予納が無ければ申立ては棄却される
- 223条1項の本文は「できる」、ただし書きは「しなければならない」
- 223条9項により、個人再生委員は費用の前払と裁判所が定める報酬を受ける
- 司法書士が行うのは3条1項4号の書類の作成で、申立ての代理ではない
申立ての費用とは別に、再生計画で払う額があります。個人再生でいくら払うかは条文に書いてあるに分けました。