個人再生と住宅ローン|家を残せる条件は1つずつ
個人再生で家を残せる、と言われるのは住宅資金特別条項があるためです。ただし民事再生法196条以下を読むと、使えるかどうかは条件の積み重ねで決まります。
順番に見ていきます。
まず「住宅」に当たるか
196条1号がこう定義しています。
個人である再生債務者が所有し、自己の居住の用に供する建物であって、その床面積の二分の一以上に相当する部分が専ら自己の居住の用に供されるものをいう。
3つ条件が並んでいます。本人が所有していること、自分が住んでいること、床面積の2分の1以上が居住用であること。
店舗と併用している建物は、この3つ目で分かれます。同号にはただし書きがあり、建物が2つ以上ある場合は主として居住の用に供する1つに限られます。別荘や、住んでいない実家は入りません。
次にローンの形
196条3号は住宅資金貸付債権を定義していて、分割払の定めがあることと、その債権や保証会社の求償権を担保する抵当権が住宅に設定されていることを要素にしています。
住宅の建設・購入に必要な資金、土地や借地権の取得に必要な資金、改良に必要な資金が対象です。リフォームローンでも、抵当権が住宅に設定されていれば入りえます。逆に、抵当権が付いていない借入れはこの定義に入りません。
住宅に他の担保が付いていると使えない
見落とされやすいのが198条1項のただし書きです。
ただし、住宅の上に第五十三条第一項に規定する担保権(第百九十六条第三号に規定する抵当権を除く。)が存するとき、又は住宅以外の不動産にも同号に規定する抵当権が設定されている場合において当該不動産の上に同項に規定する担保権で当該抵当権に後れるものが存するときは、この限りでない。
事業の借入れのために住宅へ2番抵当を設定した、といった場合がここに当たります。住宅ローン以外の担保が住宅に乗っていると、条項そのものを定められません。登記事項証明書で先に確かめることになります。
原則は「約定どおり払い続ける」
ここが誤解の多いところです。199条1項2号が原則型を定めています。
住宅資金貸付契約における債務の不履行がない場合についての弁済の時期及び額に関する約定に従って支払うこと。
「約定に従って支払う」なので、住宅ローンは減りません。同項1号は、認可の決定が確定するまでに弁済期が到来した元本や遅延損害金を、再生計画の弁済期間内(5年を超える場合は確定から5年)に支払うとしています。
つまり住宅資金特別条項は、住宅ローンを減らす制度ではなく、住宅ローンだけを手続きの外に置いて払い続けるための仕組みです。減るのはそれ以外の債務のほうです。
住宅ローン
- 約定どおり支払う(199条1項2号)
- 減らない
滞納していた元本・遅延損害金
- 再生計画の弁済期間内に支払う(同項1号)
その他の借入れ
- 再生計画で減る
家を残す代わりに、住宅ローンは減らない。減るのはそれ以外の債務のほう
支払える見込みがあることが前提になるので、収入のほうを先に確かめることになります。
住宅ローンの債権者は決議に加われない
201条1項がこう定めています。
住宅資金特別条項を定めた再生計画案の決議においては、住宅資金特別条項によって権利の変更を受けることとされている者及び保証会社は、住宅資金貸付債権又は住宅資金貸付債権に係る債務の保証に基づく求償権については、議決権を有しない。
権利が変わらない前提で払い続けるので、決議には加わらないという組み立てです。ただし同条2項により、裁判所はその者の意見を聴かなければならないとされています。
代位弁済されていても、6か月以内なら戻せる
滞納が続いて保証会社が代位弁済してしまうと終わり、と思われがちですが、198条2項に期限つきの規定があります。
保証会社が住宅資金貸付債権に係る保証債務を履行した場合において、当該保証債務の全部を履行した日から六月を経過する日までの間に再生手続開始の申立てがされたときは、第二百四条第一項本文の規定により住宅資金貸付債権を有することとなる者の権利について、住宅資金特別条項を定めることができる。
そして204条1項本文です。
住宅資金特別条項を定めた再生計画の認可の決定が確定した場合において、保証会社が住宅資金貸付債権に係る保証債務を履行していたときは、当該保証債務の履行は、なかったものとみなす。
**「なかったものとみなす」**なので、代位弁済の前の状態に戻ります。期限は保証債務の全部を履行した日から6か月で、この日数の起算点は代位弁済の日です。督促の通知が来た日ではありません。
認可されたあとも、契約の条件はそのまま残る
家を残せたあとの話も条文にあります。203条2項です。
住宅資金特別条項を定めた再生計画の認可の決定が確定したときは、住宅資金特別条項によって変更された後の権利については、住宅資金特別条項において、期限の利益の喪失についての定めその他の住宅資金貸付契約における定めと同一の定めがされたものとみなす。
期限の利益の喪失についての定めが、そのまま残るとされています。つまり認可のあとに支払いが滞れば、契約どおり一括請求される状態に戻ります。手続きが終わったことと、支払いが終わったことは別です。
同条1項には、連帯債務者に関する定めもあります。再生債務者が連帯債務者の一人であるときは、住宅資金特別条項による期限の猶予は他の連帯債務者に対しても効力を有するとされています。ペアローンや親子リレーの場合に効いてくるところです。
確かめる順番
条文の並びをそのまま手順にすると、こうなります。
- 建物の名義と居住の状況(196条1号)
- 借入れに抵当権が付いているか(196条3号)
- 住宅に他の担保が付いていないか(198条1項ただし書)
- 約定どおり払い続けられる収入があるか(199条1項2号)
- 代位弁済があったなら、その日から6か月以内か(198条2項)
1と3は登記事項証明書、2は契約書、5は保証会社からの通知で分かります。相談の前に集めておくものは相談の前に集めておく書類にまとめました。
費用の見方は個人再生の費用は、事務所に払う分と裁判所に納める分に分かれる、自己破産との違いは個人再生と自己破産は何が違うかにあります。自己破産では家の扱いが変わるので、そちらは自己破産で車がどうなるかは、名義と価値で分かれると同じ考え方になります。
判断に迷うときは、法テラス(日本司法支援センター)や各地の弁護士会・司法書士会の相談窓口があります。消費者ホットラインは 188 です。
住宅資金特別条項を使うなら、頼む相手が絞られる
個人再生の申立てで司法書士が行うのは、裁判所に提出する書類の作成です。代理ではありません。住宅資金特別条項は再生計画の中身に関わります。代理人として組み立ててもらう場合は弁護士になります。シン・イストワール法律事務所は弁護士事務所で、1社あたり140万円という上限もありません。
住宅ローン以外の借入だけを任意整理で片づける形もあります。その場合は認定司法書士(法務大臣の認定を受けた司法書士)でも、1社あたり140万円までは代理できます。アース司法書士事務所は認定番号(第612074号)を公開しています。
条件の確認は、依頼する前でも始められる
登記事項証明書と契約書は自分で取れます。代位弁済の日付も保証会社からの通知に載っています。6か月の期限があるので、確かめる順番を先に決めておくほうが安全です。
そのうえで頼める相手は金額で分かれます。司法書士が任意整理で代理できるのは1社あたり140万円までです。しかも認定を受けた司法書士に限られます。個人再生で司法書士が行うのは書類の作成です。大阪のアース司法書士事務所は、代表者の認定番号(第612074号)を事務所紹介のページに載せています。大阪司法書士会の登録番号も同じページにあります。
まとめ
- 196条1号の住宅は、本人所有・自己居住・床面積の2分の1以上が居住用
- 196条3号は分割払と、住宅に設定された抵当権を要素にしている
- 198条1項ただし書により、住宅に他の担保があると条項を定められない
- 199条1項2号の原則は約定どおりの支払いで、住宅ローンは減らない
- 201条1項により、住宅ローンの債権者と保証会社は議決権を持たない
- 198条2項と204条1項により、代位弁済から6か月以内なら履行が無かったものとみなされる
計画どおりに払えなくなったときに住宅ローンの抵当権がどうなるかはハードシップ免責の4つの要件で扱っています。
同じ理屈が車のローンには働きません。196条1号の定義が「建物」で、車に対応する条項が無いためです。詳しくは個人再生で車のローンだけ特別扱いされない理由にまとめました。