ハードシップ免責の4つの要件
個人再生は、認可された再生計画にそって3年から5年かけて返していく手続きです。その途中で収入が減ったり、病気で働けなくなったりすることがあります。
民事再生法は、そうなった場合の道をいくつか用意しています。どれも要件が細かいので、条文のまま並べます。
用意されているのは3つ(民事再生法234条・235条・189条)
期限を延ばす
- 234条
- 最長で2年の延長
残りを免除してもらう
- 235条
- 4分の3以上払ったあと
計画が取り消される
- 189条
- 債権者の申立てによる
上2つは自分から動くもので、最後だけが債権者の側から起きる
3番目は自分から選ぶものではありません。順に見ます。
期限を延ばす(234条)
最初に検討されるのが期限の延長です。
小規模個人再生においては、再生計画認可の決定があった後やむを得ない事由で再生計画を遂行することが著しく困難となったときは、再生債務者の申立てにより、再生計画で定められた債務の期限を延長することができる。
条件は「やむを得ない事由」で「著しく困難」になったことです。延長できる幅にも上限があります。
この場合においては、変更後の債務の最終の期限は、再生計画で定められた債務の最終の期限から二年を超えない範囲で定めなければならない。
2年が上限です。 もともと3年の計画なら最長5年、5年の計画なら最長7年になります。総額が減るわけではないので、1回あたりの金額が下がるだけです。
残りを免除してもらう(235条)
延長しても足りない場合に、残りの免除を求める道があります。条文の見出しは「計画遂行が極めて困難となった場合の免責」です。
再生債務者がその責めに帰することができない事由により再生計画を遂行することが極めて困難となり、かつ、次の各号のいずれにも該当する場合には、裁判所は、再生債務者の申立てにより、免責の決定をすることができる。
「かつ、次の各号のいずれにも該当する場合」とあるので、4つ全部を満たす必要があります。
- 変更後の各基準債権などに対して4分の3以上の額の弁済を終えていること
- 229条3項各号の請求権についても4分の3以上の弁済を終えていること
- 免責の決定が再生債権者の一般の利益に反するものでないこと
- 234条の期限延長をすることが極めて困難であること
1番目がいちばん重い条件です。3年で36回払う計画なら、27回分に相当します。始まってすぐ払えなくなった場合には使えません。
4番目も見落とされます。先に延長を検討して、それでも駄目なときに初めて出番が来ます。延長と免除は並んでいる選択肢ではなく、順番があります。
免除されない債務がある(民事再生法235条6項の括弧書き)
免責が確定しても、全部が消えるわけではありません。
免責の決定が確定した場合には、再生債務者は、履行した部分を除き、再生債権者に対する債務(第二百二十九条第三項各号に掲げる請求権及び再生手続開始前の罰金等を除く。)の全部についてその責任を免れる。
括弧の中が残るものです。229条3項各号は、悪意で加えた不法行為の損害賠償、故意または重大な過失で人の生命や身体を害した場合の損害賠償、夫婦間の協力扶助・婚姻費用・子の監護・扶養の義務にあたる請求権を挙げています。養育費がここに入ります。
保証人には効かない(235条7項)
もう1つ、条文がはっきり書いていることがあります。
免責の決定の確定は、別除権者が有する第五十三条第一項に規定する担保権、再生債権者が再生債務者の保証人その他再生債務者と共に債務を負担する者に対して有する権利及び再生債務者以外の者が再生債権者のために提供した担保に影響を及ぼさない。
保証人の債務はそのまま残ります。 免責を受けた本人が払わなくなった分は、保証人に請求が向かうことになります。奨学金や事業の借入れで親族が保証人になっている場合、ここが実際の問題になります。
担保についても同じで、住宅ローンの抵当権は免責の影響を受けません。住宅を残す条項の仕組みは個人再生で住宅ローンだけ払い続けるにまとめました。
計画が取り消される(189条)
払えないまま放っておくと、債権者の側から取消しを求められることがあります。
再生計画認可の決定が確定した場合において、次の各号のいずれかに該当する事由があるときは、裁判所は、再生債権者の申立てにより、再生計画取消しの決定をすることができる。
各号の2番目が「再生債務者等が再生計画の履行を怠ったこと」です。
ただし、誰でも申し立てられるわけではありません。189条3項は、この理由での申立てを、認められた権利の全部について裁判所が評価した額の10分の1以上にあたる権利を持つ再生債権者に限っています。しかも、その債権者自身が履行を受けていない場合に限られます。
取り消されると、減額される前の金額に戻ります。そこから自己破産へ進むことになる場合の条件は自己破産できる条件はどこに書いてあるかにあります。
給与所得者等再生でも同じ
ここまでは小規模個人再生の条文です。給与所得者等再生については245条が「適用しない」規定を並べていますが、234条と235条はそこに入っていません。
2つの手続きの違いそのものは個人再生と自己破産はどこが違うかで扱っています。
払えなくなりそうだと分かった時点で相談する
条文を読むと、どの道も裁判所への申立てが要ります。自分で気づいて動かないと始まりません。
- 延長(234条)は「やむを得ない事由」の段階で使う
- 免除(235条)は4分の3以上払ったあとにしか使えない
- 何もしないと、債権者の申立てで取り消されることがある
滞納してから考えるより、払えなくなりそうな段階で相談するほうが選択肢が多く残ります。依頼した事務所があるなら、まずそこへ連絡することになります。
費用や相談の準備は債務整理の費用はどこに出ているか、相談の前に用意しておくものにまとめました。
生活そのものが立ち行かない状態であれば、お住まいの自治体の生活困窮者自立支援の窓口や、法テラス(日本司法支援センター)の民事法律扶助という制度があります。借金の相談は消費者ホットライン 188 でも受け付けています。
まとめ
- 払えなくなったときの道は3つ。期限の延長・残りの免除・計画の取消し
- 延長(234条)の上限は、もとの最終期限から2年
- 免除(235条)は4つの要件を全部満たす必要があり、1つ目が4分の3以上の弁済
- 免除されても、養育費などの請求権と罰金等は残る
- 免除は保証人には効かない。 担保にも影響しない
- 取消し(189条)は債権者の申立てによるもので、10分の1以上の権利を持つ債権者に限られる
- 給与所得者等再生でも、245条の適用しない規定に234条・235条は入っていない
頼む先を決めるときに知っておくこと
個人再生の申立ては簡易裁判所の手続きではありません。だから司法書士が行うのは裁判所に提出する書類の作成です(司法書士法3条1項4号)。代理人として関与するのとは別のもので、認定の有無では変わりません。違いは司法書士と弁護士の違いは140万円で分かれるにまとめました。
記事末尾の表に挙げたアース司法書士事務所は、個人再生の基本報酬を「110,000円〜(税込)」と示しています。そのうえで「別途、予納金等の実費が必要となります」と併記しています。事務所報酬と予納金を分けている例です。下限だけの数字なので、当サイトでは金額として掲載していません(2026年8月31日確認)。
費用を比べるときは、事務所の報酬と裁判所に納める予納金を分けてください。
弁護士に代理してもらう場合、住宅を残すかどうかで費用の欄が分かれます。シン・イストワール法律事務所は個人再生の着手金を、住宅ローンがない場合と住宅資金特別条項を利用する場合とで別に示しています(2026年9月1日確認)。
ハードシップ免責を考える段階では、住宅をどうするかが先に来ます。そこが決まらないと費用も決まりません。下限だけが示されていることが多いので、上がどこまでかは見積もりで聞くことになります。