債務整理のあとの賃貸は、審査するのが大家ではない
債務整理を考えるときに出てくる心配のひとつが、部屋を借りられるかどうかです。持ち家を手放す場合はもちろん、そうでなくても更新や引っ越しの予定があれば気になります。
先に言えることがあります。審査をしているのは、多くの場合は大家ではありません。
誰が審査しているのか
いまの賃貸契約では、連帯保証人の代わりに家賃保証会社を付ける形が広く使われています。このとき入居希望者は、大家と賃貸借契約を結ぶのとは別に、保証会社と保証委託契約を結びます。
審査をするのは、この保証会社です。だから「信用情報を見られるか」は、大家の方針ではなく保証会社の側で決まります。
保証会社の登録は任意になっている
国土交通省は家賃債務保証業者の登録制度を設けています。その根拠である家賃債務保証業者登録規程3条1項は、こう書いています。
家賃債務保証業を営む者は、国土交通大臣の登録を受けることができる。
「受けなければならない」ではありません。貸金業のように登録が営業の条件になっているわけではないので、登録していない保証会社も営業できます。
登録した業者だけができることは、標識を掲げることです。同規程22条2項。
第三条第一項の登録を受けていない者は、前項の標識又はこれに類似する標識を掲げてはならない。
つまり標識の有無は、登録しているかどうかの目印にはなります。ただし登録の有無は、信用情報を見るかどうかとは別の話です。
信用情報を見るかどうかは、別の登録で決まる
同じ規程の登録申請書には、他の免許や登録を書く欄があります。そこに並んでいるのは、宅地建物取引業の免許、貸金業の登録、賃貸住宅管理業の登録の3つです。
ここが分かれ目になります。貸金業やクレジットの登録も持っている会社は、指定信用情報機関を使える立場にあります。一方で、家賃保証だけをやっている会社は、その立場にありません。
保証会社は大きく2通りに分かれると言われますが、その区別は会社の系列ではなく、こうした登録の有無で見るほうが確実です。
加盟しているかは自分で調べられる
推測で判断する必要はありません。CICは加盟している会社を公開しています。
情報開示とは、お客様ご本人のお申込みにより、CICに加盟している会員会社(クレジット会社等)との契約内容や支払い状況等の信用情報を確認できる制度です。
CICのサイトには加盟会員を検索する機能があり、申し込もうとしている保証会社の名前で引けます。出てくれば、その会社はCICの情報を扱える立場にあります。
自分の側にどう記録されているかは、債務整理のブラックリストは何年で消えるかで保有期間から整理しています。名簿があるわけではないので、消えるまでの年数と、何が登録されているかを分けて見ることになります。
落ちたときに取れる手
保証会社の審査に通らないことは起こりえます。そのときの選択肢は3つあります。
別の保証会社の物件を探す
- 信用情報を見ない会社に当たる可能性がある
連帯保証人を立てられる物件を探す
- 保証会社を使わない契約にする
公営住宅を検討する
- 保証会社を前提にしない制度がある
上は運に左右されるが、下2つは仕組みのほうを変える
不動産会社に「保証会社はどこか」を先に聞くと、無駄な申し込みを減らせます。
先に聞いておく理由は、時間の節約だけではありません。CICに加盟している会社に申し込むと、申し込んだ事実そのものが登録されます。
クレジットやローンの新規申込みにおける支払能力を調査するため、加盟会員が照会した事実を表す情報
これが申込情報で、CICは保有期間を照会日から6か月と公表しています。落ちた結果が記録されるのではなく、照会したことが記録されます。短い期間に何社も申し込むと、その分だけ照会の記録が並ぶことになります。
登録される項目には照会日、商品名、契約予定額、照会会社名が含まれます。次の会社が見るのはこの並びなので、間隔を空けるほうが不利になりにくくなります。
契約したあとに使える権利
保証会社と契約したあとにも、規程が定めている権利があります。覚えておくと効くのが帳簿の閲覧です。同規程21条。
賃借人等又は賃借人等であった者は、家賃債務保証業者に対し、前条の帳簿(これらの者の利害に関係がある部分に限る。)の閲覧又は謄写を請求することができる。
帳簿には契約年月日、保証期間、保証会社が立て替えた金額が書かれています。請求できるのは契約中の人だけではなく、契約が終わった後の人も含みます。
立て替えられた額に心当たりがないときは、まずこれを見ることになります。金額の言い分が食い違ったまま請求を受けるより先に、記録を確かめられます。
催告の書面には書くべきことが決まっている
家賃を立て替えられたあと、保証会社から支払いを求める書面が届くことがあります。この書面の中身も規程が定めています。同規程19条1項。
家賃債務保証業者は、賃借人又はその保証人(以下「賃借人等」という。)に対し、支払を催告するために書面を交付し、又はこれに代わる電磁的記録を提供するときは、これらに次に掲げる事項を記載し、又は記録しなければならない。
書くことになっているのは5つで、金額だけではありません。
記載事項何が分かるか
- 商号・住所・電話番号誰から来た請求か
- 交付した者の氏名または部署名誰に聞けばよいか
- 保証委託契約の契約年月日いつの契約に基づく請求か
- 求償権の額と内訳何がいくら積まれているか
5つ目は、相談や苦情を受ける窓口です。
求償権の行使に関する相談又は苦情に応ずる者の氏名及び連絡先又は部署の名称及び連絡先
金額だけが書かれた通知が来たら、記載事項が足りていません。内訳が示されていなければ、遅延損害金がいくら含まれるのかも確かめられません。このとき先に見るのが、ひとつ前の帳簿の閲覧です。
なお、これは登録した業者に課される決まりです。登録が任意である以上、登録していない会社にはこの規程が及びません。契約の前に標識を確かめておく意味は、ここにもあります。
ここまでで分かること
- 賃貸の入居審査をしているのは大家ではなく、多くは家賃保証会社
- 家賃債務保証業の登録は任意で、登録していない会社も営業できる(規程3条1項)
- 標識を掲げられるのは登録した業者だけ(同22条2項)
- 信用情報を見るかどうかは、貸金業などの別の登録を持っているかで決まる
- 加盟しているかはCICの加盟会員検索で自分で調べられる
- CIC加盟の会社に申し込むと、照会した事実が申込情報として6か月残る
- 契約が終わった後でも、保証会社の帳簿の閲覧・謄写を請求できる(同21条)
- 催告の書面には、金額だけでなく内訳と苦情窓口まで書くことになっている(同19条1項)
手続きを選ぶ段階での違いは、債務整理の種類と選び方にまとめています。
手続き中に住むところを移すこと自体は、裁判所の許可の話になります。手順は自己破産の手続き中の引っ越しにまとめました。
誰に頼めるかは、1社あたりの額で決まる
任意整理を代理できるのは弁護士と、認定を受けた司法書士です。司法書士の側には1社あたり140万円という上限があります(司法書士法3条1項7号)。総額ではなく1社ずつで見るので、合計が140万円を超えていても収まることがあります。線の引き方は司法書士と弁護士の違いは140万円で分かれるにまとめました。
記事末尾の表に挙げたアース司法書士事務所は、任意整理の基本報酬を取引中の会社1社あたり「11,000円〜(税込)」、完済している会社は「1社あたり 0円」と分けて示しています。減額報酬とオプション報酬は「当事務所では頂戴いたしません」と書かれています。下限だけの数字なので、当サイトでは金額として掲載していません(2026年8月31日確認)。
先に、どの会社にいくら残っているかを1社ずつ書き出してください。そこが分からないと、どちらに頼むかも費用も決まりません。